アレン・ガネット:クリエイティビティのスイッチを入れる方法

how to learn creativity

クリエイティビティは生まれ持った素質のように語られることが多々あります。つまり、生まれつき『ある』か『ない』というようにです。技術、芸術、科学など分野を問わず、クリエイティブなイノベーションは選ばれた人たちによって、インスピレーションの瞬間にもたらされ、そのような素質を持たない人たちは運がないのだと思われがちですが、本当にそうでしょうか。

「まさか、そんなわけありません。」とアレン・ガネット氏は言います。彼はビッグデータの起業家であり、『クリエイティブ・スイッチ:企画力を解き放つ天才の習慣』の著者でもあります。適切なツールと知識があれば、誰でもクリエイティビティを身につけられるとガネット氏は考えます。そして、自分のアイデアを世界中の人とシェアする適切なタイミングもあるのだと。個々もしくは職場のクリエイティビティを育てて、イノベーションを促進するにはどうすればいいのか、ガネット氏にお話を伺いました。

 

クリエイティビティについての思い込みを払拭する

ガネット氏にはデータや分析のバックグラウンドがあり、さまざまな業界の人々がクリエイティビティについての科学を活用できるよう支援したいと強く思っています。彼は自分の見解が独特だと気づいたときに、このテーマに興味を持ちました。マーケティング・インサイトで働いていたときに、自分はクリエイティブではないと言う人がいかに多いかに驚きました。

「私はこれを何度も繰り返し聞いていました。クリエイティビティは後から身につけられるスキルだと思って育って来ました。」と彼は思い返します。「でも、気づいたのです。自分は少数派で、ほとんどの人はクリエイティビティを神から与えられた生まれつきの素質のようなものだと考えていることに。」

では、どちらの見方が正しかったのか。ガネット氏は心理学、神経科学、ビジネスなどの分野からクリエイティビティの研究を掘り下げ、自分の考え方の方向性が正しいと確認しました。クリエイティブなイノベーションは神がかりの現象ではありません。成し遂げるには時間と献身それに知識の構築が必要であり、広めるにはコラボレーションとプロモーションを要します。

「創造性に関して、私たちがそれをこの孤独な天才だと考える創造性に関して間違っている傾向があるもの」とガネットは言います。 「しかし、面白いのは創造性がそのようなものであり、そのような社会現象です。」

「クリエイティビティと言うとつい勘違いしがちなのは、それを孤独な天才のように思ってしまうことです。」とガネット氏は言います。「でも面白いことにクリエイティビティがそういうものだというのは実に社会現象なのです。」

しかしながら、独創的な天才という思い込みは大衆文化に根付いています。ビートルズのヒット曲「イエスタデイ」の話を例にしてみましょう。伝説が進むにつれ、ポール・マッカートニーは夢の中でその歌を聞き、書き留め、その後は皆が知るところとされています。しかし、この歌を完成させるのにマッカートニーは2年近くを費やし、歌詞を何度も書き直したことをガネット氏は知りました。この話から得られる教訓は、『クリエイティビティは努力と反復を要する』ということです。

「これらのクリエイティブな人々の話・・・つまり、『アハ体験』でいきなりクリエイティブな作品やアイデアに導かれるという人々の話はまったくのナンセンスです。」とガネット氏は言います。「最もよく知られる逸話でさえ、現実には改善の繰り返しでできているのです。」

 

クリエイティビティを身につけるには、まずその世界に没頭する

クリエイティビティを身につけるにはどうすればいいのでしょう。その答えを見つけるために、ガネット氏はミシュランの星を持つシェフから、テクノロジー、メディア、エンターテイメントのリーダーまで、そのクリエイティビティで名を馳せているプロたちにインタビューを行いました。その結果、彼ら全員が『大量消費者』であり、起きている時間のおよそ20%を彼らの専門分野に関する情報収集にあてていることが分かりました。

「彼らはその専門分野を、取り憑かれたように深く深く追求するニッチな消費者なのです。もしファンタジーの本を書くとしたら、その前にあらゆるファンタジーの本を読んでいます。ミュージシャンなら自分のジャンルのアルバムをすべて聴くのです。」

例えば、Netflixのチーフコンテンツオフィサーである、テッド・サランドスは毎日4時間ビデオを観ます。クリエイティブな成功においてこれほどまでに消費が重要なのはなぜでしょう。

「頭の中で点と点を繋げようと思ったら、まずそれらの『点』を持たなくてはなりません。」とガネット氏は説明します。コンテンツに没頭することで、新しいアイデアを生み出すための生のデータが得られます。それによって、どのようなスキルを開発して練習すればよいのか、どのテーマ―に焦点を当てるべきか、衰退傾向にある分野とイノベーションにある分野をどのように見分ければよいのかが分かるようになります。

「入ってくるものから、出ていくものは作られます。だから消費はとても重要なのです。」とガネット氏は指摘します。

さらに、このような行動はクリエイティブ・コミュニティを見つけるのにも役立ちます。意思を同じくする個人が集まって、インスピレーションやコラボレーション、プロモーションの重要な機会を提供し合うのです。アーティストが弟子の機会を提供したり、成功したミュージシャンが新進気鋭のバンドをツアーに誘ったり、誰だって導いてくれるメンターが必要です。彼らは、ファンやマーケティング担当者、ディストリビューターなどのネットワークへのアクセスを提供してくれるのです。

「クリエイティブなプロセスで大きな位置を占めるのが、実際にそのアイデアを多くの人に見てもらうことです。」とガネット氏は言います。「クリエイティビティにおいて『ヒト』という要素は単に役に立つという訳ではなく、不可欠な要素なのです。」

練習や努力、コミュニティなどが重要な一方で、これらのファクターだけで必ずしも結果が得られるわけではないとガネット氏は付け加えます。有意義で意識的に量より質に焦点を当てた仕事でなければなりません。手がかりにクリエイティビティを奮い立たせようとするのではなく、自分に合ったスケジュールを見つけなくてはなりません。

 

タイミングが全て

もちろん、熱心に創造に取り組んでもまったくイノベーションにつながらなかった人たちは山ほどいます。適切なコネクションと真面目な取り組みがあったとしても、画期的なアイデアや革新的な製品、時代を超える芸術品をうに出すことはたやすくありません。イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズ、ビヨンセのような人々は他の人たちと何が違うのでしょうか。

「クリエイティビティとは社会現象であり、そこで、人々はツァイトガイスト(時代精神)の正しいポイントで何かを作り出すのです。」とガネット氏は言います。

このタイミングの第六感を開発することは、クリエイティビティを身につける上で需要な部分です。真の革新者はコンテンツを消費すること・・・つまり、専門分野に没頭し、クリエイティブなコミュニティとつながり、そして人間性を理解することで、未来を予測する術を学んできています。

心理学者によると、人間は馴染みのあるものを求めることが組み込まれているものの、同時にイノベーションも切望しているそうです。これは矛盾を生み出します。ユニークなアイデアを紹介するのが早すぎても遅すぎてもそれは失敗します。どんなに素晴らしいものであったとしてもです。

ちょうど真ん中のスイートスポットをガネット氏はこう呼びます。「創造曲線。そのアイデアが安全と受け取られるほど馴染みがありつつも、人気や好みの上で十分に成長する余地があるほど斬新な場所」と。

例えば、Appleの最初のタブレットはiPadではありませんでした。ニュートンと呼ばれる1990年代初期の製品であり、それは完全な失敗でした。最初の頓挫の後、Appleはより段階的なアプローチを取りました。まず、家庭用のデスクトップパソコン、それからiPod、iPhone、そしてついにiPadです。市場が追いついた後、タブレットは大ヒットしました。

創造曲線は両方の方向に行きます。人々は過度に製品やアイデアに晒されると興味を失います。これが成功している企業やプロミュージシャンが一発屋と一線を画すところです。彼らは適切な製品を適切なタイミングで提供する方法を知っていて、それを何度も繰り返します。

「タイミングはその時点の創造曲線に合ったアイデアを生み出す方法を学ぶこととも言えます。」とガネット氏は説明します。

 

企業はクリエイティブな社員を育てられる

ガネット氏のクリエイティビティに関する調査結果は、個人やチーム、企業の活動に役立ち、職場においても容易に適用できます。次に紹介する戦略は、あなたのチームがクリエイティビティを習得するのに役立つことでしょう。

 

職場でクリエイティブなコミュニティを形成する。 一般的なブレインストーミングの代わりに、多様なスキルセットを持つ社員を集めて、共通の最終目標に関するコラボレーションのセッションを行います。新製品の開発であれ、マーケティング・キャンペーンのプランニングであれ、様々なチーム、背景、視点から社員をグループ化することで、新しいアイデアを最前線にもたらすことができます。

ただし、必ずしもすぐに結果を求めてはいけません。自由に流れるアイデアの時間としておきます。クリエイティビティはオンデマンドで利用できるものではないからです。

 

反復のため余裕を作る。最初の試みから完璧な製品を期待すると、イノベーションを抑制するだけです。会社のリーダーは社員やチームに複数回の反復の自由を与える必要があります。例えば、ライターは編集者と協力できるように原稿を複数回提出し、プロダクトチームは複数のバージョンをリリースできる必要があります。

 

コンテンツへの没頭を優先する。 どんな業界であっても、社員は各分野のトレンドやイノベーションに遅れずついて行く必要があります。トレーニングや専門能力開発の機会を提供することで、既存のスキルを育成しながら、新しいスキルを開発することができます。

社員には、20%消費ルールに従うことを奨励するべきです。例えば、チームメンバーが業界のブログやニュースに目を通せるよう、マネージャーは毎朝1時間をそれに充てることができます。これは、知識を構築するだけでなく、アイデアや製品が創造曲線のどこに落ちるのかを判断するのに役立ちます。つまり、新しいものに対する適正なタイミングをはかるということです。

 

クリエイティビティは生涯学習

ガネット氏が示すように、私たちは皆、クリエイティビティを身につけることができlます。能力や才能も重要ですが、良いタイミング、反復、共同作業の必要性を過小評価しないでください。また、企業は社員間のクリエイティビティの開発をサポートできます。これにより、組織全体のイノベーションが促進されます。

「未来を見据えると、本当に成功するのは創造的な仕事です。」とガネット氏は言います。

待っている理由はありません。ガネット氏のアプローチで、私たちは皆、自分の持つクリエイティビティを新しいレベルに引き上げることができるのです。

 

原文はこちら:We Can All Learn Creativity: An Interview with Allen Gannett