【テレワークの科学】現在、そして未来

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークは一部の人が享受するものから、世界中で多くの人々が日常的に満たすべき要件に変わりました。 

テレワークに関する研究を20年以上続ける経営学の専門家、ティモシー・ゴールデン博士 (レンセラー工科大学) は、「今回のコロナ禍は、テレワークの分岐点となりました」と言います。 

テレワークがこれほど一般化した状態は、世界中のどこでも前例がありません。多くの従業員とマネージャーは、フルタイムのテレワークの実態を知り、想像とのギャップに驚いています。実は、テレワークがどういうものかを知っているという考えが、作業の妨げとなる場合があります。生産性と効率性が低下し、どうしようもなく苛立ちが募ります。今回初めてテレワークを経験するリモートワーカーとマネージャーが思い込みに振り回されず、現実に対処するには、どうすればよいでしょうか。 

この記事では、ゴールデン博士にテレワークに関する主な誤解を解説して頂きます。また博士の研究に基づいて、新型コロナウイルス対策のまっただ中にある今から未来に向けて、有益な労働習慣とプラクティスを実践するためのアドバイスをご紹介します。 

 

リモート環境で生産性と監督力を維持する

雇用主の間で多く見られるテレワークについての誤解に、管理上の問題があります。オフィスにいない従業員を本当に監督できるのか? というものです。博士によると、心配は無用です。「実際に姿が見えていなくても、オンラインで監督することは可能です」

親しい関係性と生産性を維持するには、コミュニケーションが大切です。博士はメール、インスタントメッセージ、短時間のビデオ会議などを活用して、日中こまめに従業員と意思疎通を図るよう推奨しています。ポイントは戦略的にコミュニケーション方法を工夫すること、つまりコミュニケーションの目的と共有すべき情報を意識することです。

一人ひとりが仲間との連帯感を覚える必要があると同時に、マネージャーがチームメンバーとの関係構築に継続的に努めることが重要です。博士はチームミーティングの開始時や終了時に、会って話すときと同じように数分間、雑談する時間を盛り込んだスケジュール作りを勧めています。 

雇用主が最も心配するもう1つのポイントは生産性です。オフィスに比べて、テレワークでは成果や集中力が低下する、とマネージャーたちは長らく心配してきましたが、実態はその逆でした。テレワークでは「労働時間が増え、作業への集中力が長く続く傾向がある」と博士は言います。オフィスの気が散る要素がない分、リモートワーカーはより深く作業に集中できます。作業時間が長くなる傾向もあります。  

マネージャーは生産性について過度に心配しないようにし、私物のデバイスでは仕事とプライベートの線引きが難しいと感じる可能性のあるメンバーをサポートする必要があります。博士はチームが限界を超えて働かないよう注意し、「メンバーが仕事で燃え尽きや、極度の精神的な疲労に陥らないよう徹底する」ことを推奨しています。 

適度な時間で作業を止めてしまうことも大切です。「仕事と家庭生活のバランスを保てるように、テレワークでは一定のスケジュールを立てて、規律ある日課とスケジュールを守る必要があります」

 

独立した作業スペースを確保して集中力を高める 

誤解しているのは、テレワークに懸念を抱く人だけではありません。テレワークを支持する人も、自宅での作業のしやすさを過大評価している場合が一般的です。多くの従業員がテレワークの作業スペースをパートナーや子ども、ルームメイトと共有しているため、複雑な問題が発生しています。状況が異なれば課題も変わりますが、どんな状況にも適用できる、実証された戦略を確立するよう勧めています。

まず、家のどこででも仕事ができる、またはそうすることが望ましいと思い込まないでください。博士は、決まった作業スペースを確保するよう勧めています。 

「家の中に独立した部屋を確保できるスペースがあると、家庭内の義務や雑事を物理的、感情的、心理的に遮断できます」 

独立した部屋を用意できない場合も、いつも作業ができるようにダイニングテーブルなどの専用エリアを確保することが大切です。上手くいくようにするには、このニーズをルームメイト、パートナー、家族に伝える必要もあります。人間関係の他の問題と同じように、明確でオープンなコミュニケーションが重要です。

「非常に実用的な対処の1つは、最善の形でテレワークのニーズを調整できるように、家族と正直に、誠実に、率直に話し合い、一定の合意もしくは取り決めを行うことです」 

 

孤立はテレワークでの最大の危険 ― 創造的な戦略が効果を発揮する

人間が社会的な生き物であるということは紛れもない事実です。しかしながら、直接顔を合わせないと、つながりを感じたり、最高の仕事をすることはできないのでしょうか。このトピックについては一言では語りきれないと博士は言います。テレワークが社会的あるいは仕事上での孤立につながる可能性があることは否めません。それでも、安全で快適なホームオフィス環境を生かし、人とのつながりや協力体制、チーム内の連携を保つためにできることはあると言います。

まず、問題が発生する前に積極的に手を差し伸べることが大切です。同僚から話を持ち掛けられるのを待つのではなく、率先して行動を起こしてください。早めの積極的な行動を心がけ、つながりを重視します。また博士は、オフィスでは同僚どうしの話題が仕事のタスクや締め切り以外にも及ぶことを指摘しています。リモート環境においても、会話に自然な流れができるよう努めてください。 

「非公式のディスカッションの時間を設けます。チャットでも構いません。気軽な話し合いを通じて、互いへの親しみを実感し、強固な関係を維持できます」

具体的には、同僚とのバーチャルランチやコーヒータイムなどがよいでしょう。どのような活動でも、オフィス環境で自然に生まれるような快適でカジュアルな交流を目指します。 

「オフィスにいれば、廊下や休憩場所で同僚と偶然に会う可能性があります。こういった自然な打ち解けたやり取りは自宅では生まれないため、あえて一日の予定に組み込む必要があります」

 

新型コロナウイルスで垣間見える未来の仕事像

多くのアメリカ人が急遽、テレワークを始めることは、誰も予測できないことでした。新型コロナウイルスの拡大は、将来の仕事のあり方に大きな影響を与えるでしょう。他の専門家たちと同様に、ゴールデン博士も「テレワークを受け入れる可能性と効果的な実践方法に関して、考え方に抜本的な変化が起こる」と予測しています。 

テレワークへの本格的な移行は進行中であり、今日の従業員とマネージャーは方策を模索しています。テレワークの実態について、博士はいくつかの主な誤解を払拭し、この難しい時期を乗り切るための重要な指針を示しています。 

たとえテレワークであったとしても適切な監督が実施され、生産性を達成できるので、雇用主の方は安心してください。マネージャーとチームの間の重要なつながりと連携を維持し、孤立を避けるには、強力なコミュニケーションが有効です。また従業員とマネージャーは、物理的、精神的に必要なスペースを確保することが、テレワークを成功させるカギであることを理解してください。 

ゴールデン博士は20年間以上に及ぶ研究に基づいて、すべてのマネージャーと従業員に「一部の問題を最小限に抑えつつ、テレワークの利点を最大限に生かすことができる方法を模索する」よう呼びかけています。新型コロナウイルス以後は、多くの人の仕事のあり方が変わりますが、新しい未来に向けて、今から準備を始めることができます。

 

原文はこちら:The Science of Working from Home: Present and Future