職場におけるエモーショナル・インテリジェンス

精神的に疲れ果てていると感じてはいませんか?そう思っているのはあなただけではありません。私たちは未だにコロナ渦にあり、経済的な不確実性は続いています。また、黒人コミュニティに直接的な影響を与えた痛々しい出来事も記憶に新しいところです。こんな時代に不安や疲れを感じても無理はありません。

変化や激動に対応しているとストレスがかかり、通常よりも大きなプレッシャーを感じます。自分の心配事でだけでも気持ちに余裕がなくなっているかもしれませんが、一緒に働いている同僚にもそれぞれの事情があることを考えてみましょう。もしかしたら、彼らの直面している課題に気づいてあげられていないかもしれません。通常の業務や家事に加えて、幼い子どもや病気の家族の世話をしている人も多くいます。孤独感や孤立感を覚えている人もいるでしょう。エッセンシャル・ワーカーや人と接する仕事に戻る可能性のある人は、自分の健康や幸福について心配しているかもしれません。人種問題のトラウマで慢性的なストレスを抱えている人たちは、恐怖や不安を感じているかもしれません。

この危機において、一人ひとりが異なる経験をしています。それが、エモーショナル・インテリジェンス(EI)が重要となる理由です。職場において感情を管理し、エモーショナル・インテリジェンスを実践することは、新しい仕事のあり方を再構築し始めるときに身につけるべき重要なスキルセットです。 

 

エモーショナル・インテリジェンスとは

「EI」という言葉を見たり、聞いたりしたことがあると思います。これは、Emotional Intelligence の略で日本語では感情的知性、心の知能などと訳されます。心理学者のダニエル・ゴールマンが1995年に出版した彼のベストセラー「Emotional Intelligence: Why It Can Matter More than IQ (邦訳『EQ こころの知能指数』)でEIの概念は広く知られるようになり、その中で彼はEIを「自分自身の感情を認識、理解および管理する管理する能力、そして同様に他人の感情を認識し、理解し、影響を与える能力」と定義しています。

ゴールマンは、次のように4つの象限でEIの概要を示します。

ここからは、職場においてエモーショナル・インテリジェンスを実践する方法を各象限ごとに細かく見ていきましょう。これまで経験したことのない環境において、きっと役立つはずです。

 

自分の感情や価値観を自覚する 

EIの第1象限は、セルフ・アウェアネス(自己認識)です。これには、自分の感情およびその影響を認識すること、そして自分の長所と限界を知ることが含まれます。今、非常に高いレベルのストレスを日々感じている中、一度立ち止まって、自己認識を育むことがさらに重要になります。

自分の気持ちに正直になるだけでなく、自分にとって最も大切な価値について振り返ることにも時間を使いましょう。もしかしたら、以前にも同じようなことをしたことがあるかもしれません。そうだとしても、今のような危機は、自分のとって何が重要であるかを再評価するよい機会です。自分のコア・バリュー(自分にとって大切な価値観)について考えてみてください。それは時間とともに進化しているでしょうか。今、最も心に響くのはどれでしょうか。それらを書き留めて、自分にとって最も大切なことを思い出しやすくしておきます。たくさんのことが一度に押し寄せて来ていると感じたとき、基準となるコア・バリューをしっかりと持っていると、自分の時間とエネルギーを費やすべき優先順位を決めるのに役立ちます。

 

強い感情に対処するときは、マインドフルネスを実践する 

EIの第2象限であるセルフマネジメント(自己管理)は、強い感情を引き起こす出来事に直面したときにポジティブな反応をできるよう努めることで実践できます。何か圧倒的な感情を経験したときのことを考えてみてください。例えば、同僚から怒りや心の痛みを感じるような厳しいフィードバックがあったときなどです。このような状況でポジティブな反応を身につけるために、まず一度立ち止まって、少し時間をかけて自分がどのような気持ちなのかを確認します。感情を認識するだけで、現状を落ち着いて見ることができ、それに対処できるようになります。

自分の感情を特定したら、深呼吸を何度かしてリセットします。状況に対処するための最善の方法を決められると、落ち着いて頭もすっきりすることでしょう。とても簡単なことに聞こえますが、強い感情からくる反応を管理するには練習が必要です。今のような困難の多い時期にはさまざまな感情を抱えることでしょうが、これはいたって正常なことです。

 

チームと定期的につながり、仕事以外の話もする

「調子はどう?」「何か手伝えることはある?」と一緒に働く人たちに声をかけていますか?EIの第3象限であるソーシャル・アウェアネス(社会的認識)は人間関係を扱う能力、他者のニーズや感情に対する共感力などに関わります。優しさや気遣いのある誠実な言葉は、関係性を築き、ソーシャル・アウェアネスを実践するための強力なツールとなり得ます。

多くの人がリモートで仕事をする今、チームの仲間とどのようにコミュニケーションをとるかについて、これまで以上に考えなくてはなりません。同僚と個別に話をして、彼らがどのような気持ちでいるか、何か手伝えることがあるかを理解し、彼らの答えに真摯に耳を傾けます。オンラインツールを利用して、チームメンバーが繋がりを育み、帰属意識を高め、レジリエンス(回復力)を構築できるよう促します。お互いをよりよく理解している同僚同士は、共感しやすくなります。

 

特に対立がある際にはチームへの共感を忘れない

第4象限である人間関係管理は、他者を望ましい反応へ導き、変化を促し、対立の交渉を行う上でのスキルや熟練度を示します。ストレスの多い状況で対立を解決しようとする場合、感情が高まった際に過剰反応が起こる可能性が常にあります。明瞭な考えを持って落ち着いた態度を維持するには訓練が必要です。

自分がストレスの多い状況にあった時をのことを思い出してみてください。例えば、あなたが期限に間に合うように必死で仕事をしたのに、同僚が課題を遅れて提出したというような状況かもしれません。自分の経験を振り返って、そのとき反射的にとった対応はどうでしたか?そのときベストだと思われる対応はどんなものだったでしょうか?今日のような環境では、同僚とオープンで率直な会話をすることが特に重要です。これによって、緊張が分散し、対立を解決するのに役立ちます。また、(ちょうど、今、私たちが直面しているような)変化した状況に適応しなければならないときに、解決策を生産的にブレーンストーミングすることができます。どんな状況を問わず、共感を実践することは、対人葛藤を克服し、より強力な関係を構築するための鍵となります。これらはすべて、職場でのエモーショナル・インテリジェンスをもつことへの助けとなります。

 

まとめ 

私たちはこのパンデミックを乗り越え、回復へと向かおうとしています。その際に忘れないでほしいのは、仕事に戻ることについて、人それぞれ異なる見方や感じ方があるということです。エモーショナル・インテリジェンスの考え方を元に、繋がりを強化し、共感を実践することで、私たちは皆がひとつとなって再構築し、これを乗り越えることができるのです。

 

原文はこちら:Emotional Intelligence In the Workplace: What Is It, And How Can it Help During these Times?