ダイバーシティ、インクルージョン、帰属意識が今まで以上に重要な理由

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的流行を取り巻く前例のない状況の中、仕事の世界は大きく変化しています。

ポジティブな面の変化では、従業員こそが最大の財産であるという意識が一部の雇用主の間で高まってきています。特に、感染のリスクを抱えながらも、社会インフラを支える必要不可欠な労働者であるエッセンシャル・ワーカーに関しては、より一層重要な存在だと実感していることでしょう。コロナウイルスの危機を企業として乗り越えるために短期的な利益よりも人を重視し、従業員を大事にすることをビジネスリーダーは以前よりも強く認識し始めていることでしょう。

一方で、雇用主の中には人種や性別、年齢などの外見的な「違い」はもちろん、宗教や価値観、性格、嗜好など、さまざまな内面の「違い」を受け入れ、認め合い活かしていくD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)プログラム」の実施に積極的ではない、または一時的に中断している企業もあります。現状を考えると、そこまで手が回らず、一時的に中断しても短期的には問題ないと考えているのかもしれません。しかし、景気が良くなり、再び人材を求めて競争が始まると、その状況が裏目となり、長期的な観点では頭を悩ませる原因となるでしょう。

特に、COVID-19とBLM(Black Lives Matter)運動のさなかでは、これまで以上にD&Iプログラムが重要となってきます。ここでは、困難な時期に従業員が安全かつ受容され、評価されていると感じるられるようにするために、企業にできることをいくつかご紹介します。

新型コロナウイルスは決して「優れたイコライザー」ではない

「新型コロナウイルスは、優れたイコライザー(社会を平等化するもの)です」と耳にしたことがあるかもしれません。事実このウイルスは、倉庫作業員から英国首相まで役職や人種を問わず、誰もが感染する可能性があります。

一部の人々は、このフレーズを使用してCOVID-19のおかげで推進された在宅勤務が、社員やマネージャー、シニアリーダー間の競争の場をいかに平準化するために役立つかを説明しています。ビデオ会議では、同僚やマネージャーさらにはCEOの子供たちが、フレームに飛び込んだり犬が膝の上に乗ってきたりと、私生活を垣間見ることができるでしょう。普段関わりの少ない人々のプライベートを垣間見ることで、私たちはお互いがつながり、同じ目線に立ち受け入れ合い、会社への帰属意識がより高まります。

しかし、 COVID-19は優れたイコライザーでは全くありません。実際に、このパンデミックは在宅勤務の普及など良い機会をもたらした反面、貧富の差や不平等な格差をさらに広げて悪化させています。

特に悪影響を受けたのは低所得労働者です。その多くは、感染のリスクが高い対面でのサービス業などに従事し、低賃金かつ在宅勤務が許されないエッセンシャル・ワーカーです。最近の米国の調査によると、これらの層は失業や減給、もしくはその家族の誰かがそのような状況に陥る可能性が非常に高いようです。そして、この辛い経済状況を乗り切る見通しが立たない状況です。

加えて、パンデミックは世界中で外国人への人種差別を引き起こしています。米国におけるアジア人に対する差別は、パンデミックの初期の頃より急増しており、一部の人々は、このコロナ禍の非難の矛先を探しているようでした。一方、中国ではアフリカ移民への虐待をエスカレートさせています。

COVID-19は、黒人、ラテン系アメリカ人、その他の少数民族に過度な影響を与えています。CDC(米国の疾病管理予防センター)の発表によると、黒人はアメリカ人全体の人口のわずか13%を占めるに過ぎませんが、2020年4月中旬の時点では、COVID-19で入院した患者の33%が黒人であると明らかにしました。CDCの見解では、非ヒスパニック系白人と比べて、黒人やラテン系アメリカ人などの有色人種が、より感染リスクのある対面でのサービスが必要な業種に就いており、有給や病気休暇は最小限の利用しかできない事実があります。

また、今回のパンデミックでは、男性社員よりも女性社員のほうが苦戦しています。パンデミック以前は、女性と男性の失業者数は同数でしたが、ヘルスケア、小売り、専門サービス業などの大規模な人員整理が発生した職種では、その対象の約77%が女性でした。新型コロナ対策のロックダウンが発生した4月には、男性では13.5%に留まったまった失業率が、女性ではが16.2%まで上昇しました。 

年配の労働者もまた汚名を着せられています。55歳以上の年配者は、COVID-19に感染した際に、若年層よりも重症化しやすく死亡の危険性が高いため、年齢による差別や「ブーマーリムーバー」という団塊世代以降がCOVID-19の感染リスクが高いということから、若い自分達には関係なく団塊世代だけの問題であることを示した言葉がソーシャルメディア上でトレンド入りしたりしています。

残念ながら、このような行いや格差の広がりを考えると、パンデミックはまったくもって社会を平等化するものではなく、私達をさらなる格差や差別を拡大し、人々の心を引き離しています。

帰属意識がどのように企業の利益に貢献するのか

このような問題のある環境下では、従業員(特に、上記で述べたような弱い立場であるエッセンシャル・ワーカー)が自身の仕事に誇りを持ってもらうことが重要です。そのためには、彼らの雇用主として寄り添い、安心して働けるようにサポートし、そして何よりも会社の一員であることを実感してもらうことです。

従業員に帰属意識を高めることは、道徳的に正しい行いということだけではなく、ビジネス上戦略性が高いともいえます。調査によると、帰属意識の高い従業員は、仕事のパフォーマンスが56%向上し、離職リスクが50%低下するため、1万人の企業で年間5,200万ドル以上節約できる計算となります。

従業員のケアをすることは、強力な採用ブランディングにも貢献しています。現在抱えている従業員だけでなく、顧客や投資家も、このような時期に企業がどのような対応しているかをチェックしています。将来的に会社に加わる可能性のある従業員も、企業がどのような対応を行ったのかを知りたがるでしょう。従業員を解雇せざるを得なかった場合でも、人道的な対応ができたか、パンデミックが発生している間、従業員の健康を可能な限り優先できたか、このような困難な時期にもD&Iに焦点を当て続けることができたか、それとも単に口先だけの対応を行い続け、企業の評価を貶めてしまうのでは大きな分かれ道となります。

企業活動の根幹にD&Iを据える方法

このような混沌とした時代にD&Iの重要性を考え、どのようにして強力なプログラムを作成し、維持していく必要でしょうか? 

コミュニケーションの方法を再確認しましょう:雇用主にとって最悪な方法は、困難な時期に沈黙することです。すべてのことを知り尽くし今後のことを的確に予想することはできませんが、事業が継続する情報や、寄り添うことを積極的に従業員に伝えてください。 

従業員同士での継続的な対話を促しましょう:ビデオ会議でしか顔を合わせることができない場合は、頻繁にコミュニケーションを取ることが特に大切です。また、チームメンバーとマネージャーの間でオープンな対話を奨励することは、従業員の育成およびチーム間の団結力を促進します。状況は人それぞれですが、そんな今だからこそ、誰もが思いやりの心を必要としています。チームメンバーの特定のニーズを考慮に入れ、一人ひとりの状況を把握するように努めましょう。そして、共に成功へ向けて計画を立てましょう。

些細なことに気を取られてはいけません:チームの優先順位を常に見直しましょう。子供や高齢者の両親の世話をするために、急な有給休暇が必要になったり、柔軟なスケジュールを必要とするチームメンバーがいる場合、可能な限り、彼らのニーズに対応し協力しましょう。上司にどう思われるかを恐れて、休暇の申請を躊躇する従業員は、過度の労働により燃え尽き症候群になる可能性があることにも注意してください。従業員が気兼ねなく有給休暇を利用できるように勧めることが大事です。

エッセンシャル・ワーカーをどのように定義し、支援するかを考えてみましょう:現在エッセンシャル・ワーカーの中には、最低賃金で働く従業員が非常に多く存在しています。企業が本当に不可欠な従業員が誰であるかを理解し、そして彼らが必要な支援について公にすることで、パンデミックな状況を変える一助とできるでしょう。

結果的に、今すぐにD&I戦略を放棄しても、何も得るものはありません。実際に、D&Iプログラムを企業戦略の中心に据え、何がうまく機能していて、何を改善すべきかを判断しながら試行錯誤を繰り返す理想的な時期でもあります。そうすれば、採用を再開したり増やしたりする際に、D&Iの理念が企業のDNAの一部となって定着していることをアピールできるでしょう。

原文はこちら:Why Diversity, Inclusion and Belonging Are More Important Than Ever