「ダイバーシティー&インクルージョン」ー 成功する研修プログラム

ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂)(D&I)のトレーニングは、今日の企業にとって最優先事項のひとつです。企業が組織内のD&Iの改善に取り組むにつれて、教育とトレーニングが果たす重要な役割に対する認識が高まっています。雇用や昇進制度の構造変化によりバイアスや障壁を減らすことができる一方で、インクルージョンやビロンギング(帰属意識)の文化を作り出すことが、優秀な人材をキープするために必要だと、企業はあらゆる場面で気づきます。企業がダイバーシティ&インクルージョンのトレーニングを積極的に提供することによって、従業員はインクルーシブな職場環境を作るために必要な知識やスキルを得られます。

ダイバーシティ&インクルージョンの研修に時間をかけることは、それが純粋に正しいというだけでなく、ビジネスにも役立ちます。従業員が心理的な安全感と帰属意識を持てる環境では、生産性や定着率が高まるだけでなく、企業が多様な候補者にとって働きやすい場所であることを発信することによって雇用主としてのブランドも強化されます。多様な労働力の方が、高いイノベーションやビジネスの成果につながることも証明されています。Scientific Americanによると数十年にわたる研究で多様性の高いグループの方がより革新的であることが示され、またコンサルティング会社のマッキンゼーの調査では、多様な労働力のある企業の方が平均以上の財務利益を得る可能性が高いことが分かっています。

ここまででダイバーシティ&インクルージョンのメリットを理解していただけたと思いますが、実際に効果的なトレーニング・プログラムを作成するには何から始めればよいのでしょうか。IndeedでD&Iおよびビロンギング(帰属意識)の教育プログラムを担当しているタチアナ・ ウェルチ・マクルーア氏に詳しい話を聞きました。

 

ダイバーシティ&インクルージョンのトレーニングプログラムを作成する方法

 

1. ニーズの評価

すぐに行動に移したいと思うかもしれませんが、まずは自社のD&Iの取り組みについて戦略的に考えることが重要です。最初にニーズ評価を行って、組織固有のD&Iの課題と機会を明らかにします。「まず、プログラムを作成する理由を振り返ることが重要です。」と ウェルチ・マクルーア氏は言います。組織がどのように変わることを期待するのか。何か特定のインシデントが発生したことが理由でトレーニング・プログラムを作成しているのか。あるいは、対処する必要のある、より広範な体系的障壁が存在するのか、などです。

これらの問いに答えるには、従業員からフィードバックを集め、ダイバーシティのデータを調査する必要があります。従業員から率直な意見を引き出せるように、さまざまなオプション(グループディスカッションや匿名アンケートなど)を提供し、組織の中でダイバーシティやインクルージョン、ビロンギングがどのような状態なのかをよりよく理解します。

 

2. ダイバーシティ&インクルージョン戦略の開発

トレーニング・プログラムは大きな戦略的な取り組みの一部だと考えてください。「偏見や先入観についてのオンライン・コースを提供してそれで終わり」ではビロンギングの文化は生まれません。例えば、ニーズ評価によりエンジニアリング部門での人種的なダイバーシティが欠如していることが分かった場合、エンジニアリング部門の人材調達のソースを広げたり、明白な評価基準をもとにした採点システムを導入して、面接での先入観を軽減するなどの方法があります。もちろん、アンコンシャス・バイアス(無意識の先入観)を排除するトレーニングも提供する前提です。

ダイバーシティ&インクルージョン戦略を策定する際には、事業を行う可能性のある様々な土地の事情も踏まえて、体系的な不平等をより広範に検討してみてください。これによって、不均衡を正すために企業が果たせる役割をより明確に特定できます。「黒人差別は特にアメリカ合衆国と西ヨーロッパの国々で今も存在します。これを認めない企業はD&I戦略に失敗するかもしれません。」とウェルチ・マクルーア氏は言います。

 

3. ダイバーシティとインクルージョンの目標に基づいてトレーニングをカスタマイズ

調査結果に基づいて戦略を確立したら、次はトレーニング・プログラムを特定の目標に合わせる必要があります。ダイバーシティ&インクルージョンのトレーニングは対人関係の実践に焦点を当てることができます。つまり、話しづらい内容の会話をしたり、アライシップ(被差別者への支援)を実践する方法などです。また、人種的平等や社会正義のような体系的な問題のトレーニングを行うことも可能です。インタラクティブな演習やグループディスカッションなどの教育メソッドを組み込んで、参加者のエンゲージメントを高めます。また、対面式のワークショップにオンライン・コースの研修を追加して学習を強化します。

ウェルチ・マクルーア氏はスキルベースの学習に焦点を当てることの重要性を強調しています。「行動に基づいたトレーニングは、人々がすぐに実践できる具体的な行動があるので結果を残しやすいでしょう。」アンコンシャス・バイアスへの意識を高めたとしても、すぐに結果がでるとは限りません。でも、偏見を軽減するためにできる具体的な手順を参加者に示すことで、より良い効果が得られます。

 

4.ファシリテーター(進行役)を決める

目標をサポートするために必要なトレーニングの種類が分かったら、次はその実践です。企業によってはこの分野の専門家や教育者、トレーナーなどの完全なチームを内製化することができるかもしれません。そうでない場合は、外部委託するか、もしくは内部と外部の教育プロバイダーを組み合わせて使う必要があるでしょう。外部委託する際は、対象分野の専門知識やファシリテーションの経験など、十分な資格があるか確認してください。

また、外部のファシリテーターを雇ったとしても、社内の人事部門の社員のスキルアップを図ることが重要だとウェルチ・マクルーア氏は指摘します。「人事部門のスタッフに補足トレーニングを行うことが大切です。企業がD&Iを重視し始めると、必然的にD&Iの視点から見なければならないトピックが浮かび上がってきます。それらに対応するためにも人事部が前もって準備ができている方がよいでしょう。従業員関係の問題が以前の認識と微妙に異なる場合もあるかもしれません。」

 

5. トレーニング・プログラムの開始

ファシリテータ、トピック、指導方法が決まりました。これでダイバーシティ&インクルージョンのトレーニング・プログラムを開始する準備が整ったということです。これは、組織の中で進化するD&Iのニーズを満たすために時間をかけながら適応および成長できる(すべき)ことです。トレーニング・プログラムを長期的な成功に導く注意事項を見ていきましょう。プログラムを設定する上できっとあなたの役に立つはずです。

 

ダイバーシティ&インクルージョンのトレーニングのOKとNG

  • OK:包括的で十分な資金のあるD&Iプログラムの一部としてトレーニングを行う。(ダイバーシティ、インクルージョン、ビロンギングを企業文化の中に築くことは教育だけでは不可能です。)
  • OK:幹部レベルのリーダーシップを含むすべての従業員にトレーニングを提供する。
  • NG:取り残された従業員のD&I教育を自己責任にする。(従業員が自分で学習できるように、トレーニングを補足するための教育リソースを積極的に提供します。)
  • OK:講義、グループディスカッション、インタラクティブなエクササイズ、個々での内省など、さまざまな指導方法を使って参加者のエンゲージメントを高める。
  • NG:コンプライアンスやPR目的で、ダイバーシティ&インクルージョンのトレーニングを1回限りの限定的な活動として行う。(トレーニングは継続的に提供されるべきです。D&I教育は過程であり、ゴールではありません。)
  • OK:他の重要なビジネス目標と同じように、D&Iについても戦略的に考える。(トレーニングを強化するために、年間を通じての行動計画と説明責任を確立します。)

戦略的なトレーニング・プログラムを確立することにより、ダイバーシティ、インクルージョン、ビロンギングを自社の企業文化に根付かせ、すべての従業員とビジネスが反映する環境を作る手始めとなります。

原文はこちら:How to Create a Diversity and Inclusion Training Program That Works